子どもに防災を教えるのは何歳から?不安を増やさない判断軸
子どもが成長するにつれて、「防災って、いつから教えればいいんだろう」と考える瞬間は、意外と突然やってきます。ニュースで地震の映像を見たとき、園や学校で避難訓練があったと聞いたとき、あるいは夜中の地震速報に子どもが目を覚ましたとき。
早すぎると怖がらせてしまいそうで、遅すぎると守れなかったらどうしようと不安になる。そんな気持ちの間で、立ち止まっている方も多いのではないでしょうか。
この文章では、「何歳からが正解か」を決めつけるのではなく、家庭ごとに考えやすくなる判断の軸を、私自身の体験や相談を受けてきた立場から整理していきます。読み終えたときに、少しだけ気持ちが落ち着く。そんな時間になれば嬉しいです。
防災は「何歳から教えるもの」なのか迷う理由
防災について調べ始めると、「〇歳から教えるべき」「この年齢ならこれくらい理解できる」といった目安がたくさん出てきます。
一見すると分かりやすくて助かる反面、それを自分の家庭に当てはめようとしたとき、かえって迷ってしまうことも少なくありません。
というのも、子育ては年齢表だけでは進まないからです。
日々の生活の中で感じる子どもの様子や反応は、数字では説明しきれない部分が多く、「本当に今でいいのかな」「まだ早いのでは」と、親の気持ちが揺れやすいテーマでもあります。
私自身も、防災について考え始めたとき、「もう少し大きくなってからのほうがいいのか」「今から話しても意味があるのか」と、はっきりした答えが出せずにいました。
子どもの理解力や性格は本当にさまざま
同じ3歳、同じ4歳でも、子どもの反応は驚くほど違います。
音や映像に敏感で、少しの揺れやサイレンの音でも怖がってしまう子もいれば、「どうして揺れるの?」と興味を持って質問してくる子もいます。
ここで年齢だけを基準にしてしまうと、「もう教えられるはず」「まだ早いはず」と無意識に比べてしまいがちです。
その結果、「ちゃんとできていないのでは」「遅れているのかもしれない」と、必要以上に不安を抱えてしまうこともあります。
防災は、何かを“理解させること”よりも、まずは子どもが安心できる関係や空気をつくることが土台になるものだと感じています。
怖がりな子には、具体的な説明より「大人がそばにいる安心感」を。
好奇心旺盛な子には、答えを教えすぎず「一緒に考える姿勢」を。
どちらも立派な防災への入り口で、優劣はありません。
年齢という目安は、あくまで参考の一つ。
それよりも、「この子は今、何に安心して、何に不安を感じやすいか」を見つめることが、防災を考える最初の一歩になるのではないでしょうか。
私が最初に防災を意識したのは「教えよう」と思った瞬間ではありませんでした
私自身、防災について考え始めたとき、「よし、今日から防災教育をしよう」と意気込んでいたわけではありません。
きっかけは、とても日常的で、少し慌ただしい出来事でした。夜中に起きた地震で、子どもが泣きながら布団を抜け出し、私のところに駆け寄ってきたのです。
突然の揺れとアラート音。大人でも心臓が縮むような瞬間ですから、子どもにとってはなおさらだったと思います。
そのとき頭をよぎったのは、「今、何を教えるべきか」ではなく、「この子は今、何を一番怖がっているんだろう」ということでした。
怖がる気持ちにどう向き合うか
その場で私がしたのは、避難経路を説明することでも、防災リュックの中身を確認することでもありませんでした。
ただ「大丈夫だよ。ここにいれば安心だよ」と声をかけ、隣に座って、落ち着くまで一緒に呼吸を整えただけです。
しばらくすると、子どもの呼吸がゆっくりになり、表情も少しずつ和らいでいきました。その様子を見て、「今はこれでよかったんだ」と、自然に思えました。
後から振り返ると、あの時間は何かを“教えた”わけではありませんが、不安なときには大人がそばにいてくれるという感覚を伝えられた瞬間だったと感じています。
防災というと、「知識」「行動」「準備」といった言葉が先に浮かびがちです。でも、特に小さな子どもにとっては、「怖いときにどうなるか」「誰が守ってくれるのか」という感覚のほうが、ずっと大きな意味を持ちます。
あの夜の出来事があってから、防災を「何かを教え込むもの」としてではなく、「安心を積み重ねていく関わり」として考えるようになりました。
静かに寄り添うこと、落ち着いた声で話すこと、それ自体が防災の入り口になる。そう気づけたことが、私にとって最初の大きな一歩だったように思います。
年齢別に考える、防災との向き合い方の目安
「子どもに防災を教えるのは何歳からなのか」と聞かれたとき、私の中でははっきりとした年齢が浮かぶわけではありません。
それよりも、「年齢によって、防災との関わり方や伝え方が少しずつ変わっていく」と考えるほうが、実際の暮らしに近いと感じています。
子どもの成長に合わせて、できること・感じ取れることが増えていく。その流れに沿って、防災も無理なく形を変えていけばいい。そんな目安として捉えてもらえたらと思います。
0〜2歳|守られる存在としての防災
この時期の子どもは、防災を「理解する」段階ではありません。だからこそ、主役になるのは大人です。
地震が起きたときにどう動くか、どこで寝るか、どんな物が倒れてくる可能性があるか。そうしたことを大人が先回りして考え、環境を整えておくことが、防災そのものになります。
家具の固定や配置の見直し、寝る場所の安全確保、危険になりやすい物を置かない工夫。どれも子どもからは見えませんが、確実に安心につながる準備です。
この時期の防災は「教えること」ではなく、「守れる状態をつくること」だと感じています。
3〜5歳|言葉で伝え始める時期
少しずつ言葉の理解が進み、「いつもと違うこと」に気づけるようになる時期です。
ただし、長い説明や難しい話は必要ありません。「揺れたらママのところに来ようね」「この音が鳴ったら一緒に外に出るよ」といった、短くて具体的な約束が、少しずつ伝わっていきます。
このとき意識したいのは、怖さを強調しすぎないことです。
災害の映像や被害の話よりも、「一緒に動く」「一緒にいる」という安心感を軸に伝えるほうが、子どもは落ち着いて受け止めやすくなります。
防災を“怖い話”にしないことが、この時期にとても大切なポイントだと感じます。
小学生以降|自分で考える防災へ
学校で避難訓練を経験し、「どうしてこうするの?」と疑問を持ち始める時期です。
この段階では、正解を一方的に教えるより、「どう思う?」「なんでだと思う?」と問い返しながら、一緒に考える姿勢が大切になってきます。
通学路のどこが危ないか、家にいるときに揺れたらどう動くか。家庭の中で話し合うことで、防災が“決まりごと”から“自分ごと”に変わっていきます。
自分で考えた経験があるかどうかが、いざというときの行動につながると感じています。
どの年齢にも共通しているのは、「今できる形」で関われば十分だということです。
年齢を基準に無理に進めるのではなく、子どもの様子を見ながら少しずつ形を変えていく。その柔らかさこそが、防災を家庭に根づかせる助けになるのではないでしょうか。
宅建士として見ると、防災は「住まいの問題」と切り離せません
宅地建物取引士として、これまで多くの住まいや立地条件を見てきました。その中で強く感じているのは、防災は「子どもにどう教えるか」だけで完結するものではない、ということです。
どれだけ丁寧に話をしても、実際に身を置く住環境によって、できる行動や感じる不安は大きく変わります。
防災教育を考えるとき、つい子どもの年齢や理解度に目が向きがちですが、同時に「この家で、どんなことが起きやすいか」を知っておくことも、同じくらい大切な視点だと思っています。
家の構造や立地が安心感に与える影響
たとえば、木造か鉄筋コンクリートかという違いだけでも、揺れ方の感覚や音の響き方は変わります。
周囲に古い建物が多いエリアでは、倒壊や落下物への不安が強くなることもありますし、道が狭ければ避難のしやすさにも影響します。
また、避難場所までの距離や経路も重要です。坂道が多いのか、夜でも明るいのか、子どもと一緒に歩ける距離なのか。こうした要素は、いざというときの判断に直結します。
「どう教えるか」を考える前に、「この住まいでは何が起きやすいか」を把握すること自体が、防災の一部だと感じています。
これは、引っ越しや購入をすぐに検討するという意味ではありません。
今の住まいの特徴を知っておくだけで、「ここではこう動こう」「ここは少し注意しよう」と、家族の中で共有できる安心材料が増えていきます。
住まいは、日常を支える場所であると同時に、非常時の行動を大きく左右する舞台でもあります。
防災を特別な取り組みにしなくても、「今住んでいる家を、少し違う目線で見てみる」。その小さな意識の変化が、子どもにとっても、大人にとっても、落ち着いた備えにつながっていくのではないでしょうか。
「教えなきゃ」と思いすぎないことも大切な判断
防災について考え始めると、「ちゃんと教えなきゃ」「今のうちに身につけさせなきゃ」と、つい力が入りすぎてしまうことがあります。
でも実際には、頑張りすぎるほど家庭の空気が張りつめてしまい、子どもも大人も疲れてしまう場面をよく見てきました。
防災は、短期間で身につけるものではありません。日常の延長線上で、少しずつ積み重なっていくものだからこそ、無理のない形が大切だと感じています。
日常の中に自然に混ぜていく
防災のために、わざわざ時間を取って「教える場」を作らなくても大丈夫です。
散歩の途中で避難場所の前を通ったときに、「ここ、何かあったときに来る場所だよ」と一言添える。それだけでも、子どもの中にはちゃんと記憶が残ります。
防災リュックも、「中身を完璧に説明する」必要はありません。一緒に開けて、「これは懐中電灯だよ」「お水が入ってるね」と確認する程度で十分です。
日常の会話の中に、少しだけ防災の要素が混ざる。その積み重ねが、子どもにとっては自然な理解につながっていきます。
完璧を目指さないほうが、防災は長く続き、家族にとって無理のないものになると感じています。
「今日は何もできなかった」と感じる日があっても、それは失敗ではありません。
安心できる家で、穏やかに過ごせていること自体が、すでに大切な土台です。
防災を特別な課題にしすぎず、生活の一部として扱う。そのくらいの距離感のほうが、子どもも抵抗なく受け取りやすくなります。
「教えなきゃ」と肩に力が入ったときこそ、一度立ち止まって、日常の中でできていることに目を向けてみてください。それも立派な防災の形だと思います。
まとめ|子どもに防災を教える「何歳から」を考える前に
子どもに防災を教える年齢について考えたとき、多くの人が「いつ始めるべきか」という答えを探そうとします。でも、ここまで見てきたように、そこに明確な正解はありません。
年齢よりも大きく影響するのは、その子の性格や感じ方、家庭の暮らし方、そして大人がどんな姿勢で向き合っているかだと感じています。
「もう少し大きくなってからのほうがいいかもしれない」「今はこれくらいで十分かな」。
そんなふうに立ち止まって考える時間は、決して後ろ向きなものではありません。むしろ、家庭ごとのペースを大切にしようとしている証だと思います。
防災は、何かを一気に整えることではなく、安心できる感覚を少しずつ積み重ねていくものです。
他の家庭と比べる必要はありませんし、今すぐ完璧にできなくても大丈夫です。
今日できることがなければ、何もしない日があっても構いません。子どもが安心して眠り、大人が落ち着いて声をかけられる環境があること自体が、すでに大切な土台になっています。
もし今、「これでいいのかな」と迷っているなら、まずは今の住まいと暮らしを、少しだけ見渡してみてください。
その中で見えてくる小さな気づきや選択が、結果として家族の安心につながっていくはずです。
焦らず、比べず、自分たちのペースで。そんな姿勢で防災と向き合っていけたら、それで十分なのではないでしょうか。